俳句誌掲載作品 (鹿又英一)

 俳句総合誌に掲載された最近の主な作品です。
(2017年12月以降)


「俳句四季」2019年9月号掲載  作品16句

「瓦斯燈」 鹿又英一

新涼の筋道曲げぬ漢かな
控へ目なヒールの音や赤のまま
溜息を周りに散らす秋あふぎ
修船場あとの原つぱ飛蝗跳ぶ
秋風鈴信心深き婆のゐて
ふたごころ持ちたる人や稲光
秋茄子に掛けるかつぶし人恋し
ひとかげに濃淡のあり竹の春
銀漢に近き外湯の手桶かな
モデルゐて軟質となる秋の水
薄の穂桟橋に影伸ばしけり
初潮や煩悩ひとつ生まれたる
船室の丸き灯りや寝待月
地虫鳴く瓦斯燈に人待ちにけり
秋彼岸石屋の犬のまどろめり
ひやひやと髭剃り後や遠汽笛

(令和2年「蛮」53号に神野喜美女さんによる作品鑑賞を掲載しています)

「俳壇」2019年6月号掲載 作品10句

「浮桟橋」 鹿又英一


明易や埠頭に並ぶ揚陸艦
鼻歌のすぎもとまさと初浴衣
踏切を渡つて五分宵まつり
皐月波浮桟橋を揺らしけり
球場の遠き歓声蚊喰鳥
願ふことばかり梔子咲きにけり
狛犬に色を添へたる青時雨
贅肉のはみだしてゐるアロハシャツ
十薬やかつて暮しし社宅跡
巨船ゆく浦賀水道梅雨深し

(令和元年「蛮」51号に長濱藤樹さんによる作品鑑賞を掲載しています)


角川「俳句」2018年12月号掲載 作品12句

「小桟橋」 鹿又英一

墓もあり犬小屋もある蜜柑山
山茶花やか細き滝の聞こえたる
落書きの消されずにある神の留守
廃れたるホテル彩る冬紅葉
木菟に見抜かれてゐる氏素性
どてら着て社員旅行の係長
猪鍋やかへらぬ人の愚痴を言ふ
アンデスの楽士来てゐる夕時雨
聖誕祭沖待の灯の華やぎし
枯原に繋がつてゐる小桟橋
数へ日のビルより高き油槽船
煤逃げのベイブリッジを渡りけり

(平成31年「蛮」49号に尾澤慧璃さんによる作品鑑賞を掲載しています)


「俳句四季」2017年12月号掲載 作品16句

 

「音楽通り」 鹿又英一


沖待の冬暁に灯点せり

着ぶくれの釣り人のゐる埠頭かな

上屋より見えてをるなり雪の富士

荷役仕の集ふ昼餉やゆりかもめ

鯔飛んでまた鯔飛んで年の内

鴨の陣崩し押船戻りけり

ガントリークレーンのある冬夕焼

盛り塩の山茶花零れをりにけり

路地裏の灯影冷たし遠汽笛

氷下魚裂く女将の碧き爪化粧

切なさの類拒みて燗の酒

酔ひ醒ます音楽通り月冴ゆる

寒柝の音瓦斯燈に吸はれけり

外套の影齢ほど衰へず

拉麺屋の夜更のポインセチアかな

亜米利加や岩亀稲荷の鈴凍てて

 

(平成30年「蛮」44号に佐藤久による作品鑑賞を掲載しています)