俳句誌掲載作品 (鹿又英一)

 俳句総合誌に掲載された最近の主な作品です。
(2017年12月以降)


 「WEP俳句通信」125号(2021年12月)掲載 作品七句 

 

「うどん屋」 鹿又英一 

 

マヨネーズの余り気になる神の留守 

枯園の色艶の良き尼僧かな 

冬蜂の命透きたる磨硝子 

さざんくわをピザ屋のバイク散しけり 

呼び込みのビックカメラや百合鷗 

木枯しの埠頭強襲揚陸艦 

うどん屋の酒飲んでゐるクリスマス 


(令和4年「蛮」61号に佐藤 久による作品鑑賞を掲載しています)

角川「俳句」2021年10月号掲載 作品12句

 

「連結器」 鹿又英一 

 

秋簾うすぼんやりと膝がしら

ひやおろしからし蓮根頼みたる

望の潮潜水艦の浮上せり

ピーマンの種掻きだして秋彼岸

竹の春ちんちん電車軋みけり

托鉢の草臥れてをり昼の虫

後の月埠頭に船のなかりけり

石たたき飛んでガッタン連結器

鰯雲ティッシュを誰も受け取らず

鉄骨の稲架見えてをりラドンの湯

掃除機に詰まつてしまふ木の実かな

美少年の佇んでゐるそぞろ寒


(令和4年「蛮」60号に神野喜美女さんによる作品鑑賞を掲載しています)

「俳句四季」2021年6月号掲載 作品3句

 

鹿又英一 

 

しやちほこの金属疲労五月晴

街灯の歪んで映るをんな梅雨

すててこのラジオ体操蟹の穴


(令和4年「蛮」60号に尾澤慧璃さんによる作品鑑賞を掲載しています)

「俳壇」2021年5月号掲載 作品10句

 「鳶の笛」 鹿又英一 

 

江ノ島や富士までつゞく卯月波 

七輪をはみ出してゐる栄螺かな 

酎ハイの氷からころ子供の日 

桟橋につるむライダー薄暑光 

白子干す漁師の妻やサングラス 

小動(こゆるぎ)の杜の若葉や鳶の笛 

サーファーにこころざしあり姫女苑 

夕映えの名残を追つてヨットの帆 

漁火の瞬きだせり不如帰 

刃こぼれの月のせてゐる新樹かな 

(令和3年「蛮」59号に佐藤 久による作品鑑賞を掲載しています)

「俳句四季」2020年11月号掲載 作品16句

「冬岬」 鹿又英一

すがれ虫場外馬券混み合へり
着ぐるみのパンダの汚れ文化祭
人妻の整形の鼻秋深む
竹馬や沖にもも船ももち船
昼酒の壺庭に散る紅葉かな
ブティックの在庫一掃神の旅
富士山のよく冷えてをり七五三
片時雨思想もビニール傘も無き
杖突いてラジオ体操帰り花
未使用の空に皇帝ダリアかな
みやこどり理路整然と並びけり
ひとつだけ揺れぬ吊革小六月
小雪やおでんの玉子取り逃がす
革ジャンパー後継ぎといふ重きもの
競輪の落車勤労感謝の日
タンカーの音無く過ぐる冬岬

(令和3年「蛮」57号に藤田裕哉さんによる作品鑑賞を掲載しています)

「WEP俳句通信」113号(2019年12月)掲載 作品16句

 

「大都会」 鹿又英一 

 

どちらかといへば明るい冬の蠅

たこ焼のはみだしてゐる十二月

白菜を下げて聞きたる艶話

隙間風仏壇の母呼び出せり

不祥事のひとつやふたつ枇杷の花

大根の切り口にある不幸せ

河豚鍋や心変はりを責めらるる

人体をからつぽにする大枯野

歴史観の異なつてゐるおでん酒

冬の月ひとを許して帰りけり

わいざつなる街に親しむ都鳥

冬ざれの果てにありたる大都会

どつさりとご婦人のゐる冬至風呂

旋毛とは不思議なものよ日向ぼこ

看板に即金とあり雪もよひ

曳船の戻る寒暮の埠頭かな


「俳句四季」2019年9月号掲載 作品16句

「瓦斯燈」 鹿又英一

新涼の筋道曲げぬ漢かな
控へ目なヒールの音や赤のまま
溜息を周りに散らす秋あふぎ
修船場あとの原つぱ飛蝗跳ぶ
秋風鈴信心深き婆のゐて
ふたごころ持ちたる人や稲光
秋茄子に掛けるかつぶし人恋し
ひとかげに濃淡のあり竹の春
銀漢に近き外湯の手桶かな
モデルゐて軟質となる秋の水
薄の穂桟橋に影伸ばしけり
初潮や煩悩ひとつ生まれたる
船室の丸き灯りや寝待月
地虫鳴く瓦斯燈に人待ちにけり
秋彼岸石屋の犬のまどろめり
ひやひやと髭剃り後や遠汽笛

(令和2年「蛮」53号に神野喜美女さんによる作品鑑賞を掲載しています)

「俳壇」2019年6月号掲載 作品10句

「浮桟橋」 鹿又英一


明易や埠頭に並ぶ揚陸艦
鼻歌のすぎもとまさと初浴衣
踏切を渡つて五分宵まつり
皐月波浮桟橋を揺らしけり
球場の遠き歓声蚊喰鳥
願ふことばかり梔子咲きにけり
狛犬に色を添へたる青時雨
贅肉のはみだしてゐるアロハシャツ
十薬やかつて暮しし社宅跡
巨船ゆく浦賀水道梅雨深し

(令和元年「蛮」51号に長濱藤樹さんによる作品鑑賞を掲載しています)


 角川「俳句」2018年12月号掲載 作品12句


「小桟橋」 鹿又英一

墓もあり犬小屋もある蜜柑山
山茶花やか細き滝の聞こえたる
落書きの消されずにある神の留守
廃れたるホテル彩る冬紅葉
木菟に見抜かれてゐる氏素性
どてら着て社員旅行の係長
猪鍋やかへらぬ人の愚痴を言ふ
アンデスの楽士来てゐる夕時雨
聖誕祭沖待の灯の華やぎし
枯原に繋がつてゐる小桟橋
数へ日のビルより高き油槽船
煤逃げのベイブリッジを渡りけり

(平成31年「蛮」49号に尾澤慧璃さんによる作品鑑賞を掲載しています) 

 「俳句四季」2017年12月号掲載 作品16句 


「音楽通り」 鹿又英一


沖待の冬暁に灯点せり

着ぶくれの釣り人のゐる埠頭かな

上屋より見えてをるなり雪の富士

荷役仕の集ふ昼餉やゆりかもめ

鯔飛んでまた鯔飛んで年の内

鴨の陣崩し押船戻りけり

ガントリークレーンのある冬夕焼

盛り塩の山茶花零れをりにけり

路地裏の灯影冷たし遠汽笛

氷下魚裂く女将の碧き爪化粧

切なさの類拒みて燗の酒

酔ひ醒ます音楽通り月冴ゆる

寒柝の音瓦斯燈に吸はれけり

外套の影齢ほど衰へず

拉麺屋の夜更のポインセチアかな

亜米利加や岩亀稲荷の鈴凍てて

 

(平成30年「蛮」44号に佐藤 久による作品鑑賞を掲載しています)