会員自選作品集

令和元年(2019年)会員自選作品5句

東 國人(南房総市)

サーファーの太平洋を踏みつける

反対に回す地球儀原爆忌

秋晴れがブルーシートに見えてくる

地球儀に今は亡き国クリスマス

一斉に降車ボタンの光る冬 

荒木さくら(堺市)

金毘羅を駆け上りたる春の風

マネキンに着せて泳がぬ水着かな

撫子の聖天坂に咲きにけり

神の旅太陽の塔超え行けり

浮世絵の女となりて冬の雨

安藤英夫(京都市)

ホーホケキョケキョケキョケキョと愛宕山

おぉ~友よsee you again と卒業す

春の暮れ大仏見上げおぉ~凄え

秋の日やどこのどいつがハーモニカ

年賀状一年間のものがたり

大塚浩二(横浜市)

天を衝く直線道路冬茜

小春日や蛇笏の机光さす

棟上げの木組鳴らして春一番

豆飯の香り味はふ夕餉かな

冷酒と蕎麦一枚の馳走かな

大沼遊山(尼崎市)

山水で洗ふ小銭や今朝の春

盆梅てふ影絵の並ぶ襖かな

花雨の万人仰ぐ大晦日

ブロンズの象のはな子とラムネ玉

月明に香る昭和のハイボール

尾澤慧璃(横浜市)

退屈も程良き午後や絵双六

春深し手拭きを染める赤ワイン

オロナミンCの看板大西日

虫の音や太平洋に予報円

一枚の紙の重さや暦果つ

北島 篤(横浜市)

風光る谷戸坂上の測候所

五月闇坂上地蔵のゐなくなり

扇風機ただかきまわす四畳半

梅雨晴れ間サルの騒ぐを見つけたり 

逃げ水の彼方セーラー服の人

久保遡反(栃木県)

母の手を引けば二歳児冬に入る

食パンを春の厚さに切つてゐる

牡丹を支ふる茎の細さかな

消しゴムの寿命はあした赤い羽根

除夜の鐘リセットボタンはここです

小島ノブヨシ (小田原市)

蟇臍を曲げるありもせぬくせに

てんたうむしだまし冗談かとおもふ

写楽顔してをり猫がのびをして

ラムネ抜く少年銃刀法違反にて

麦わら帽子くぼめて銃を抜くしぐさ

齋藤 耐(大津市)

縄文の磐座拝む二日かな

寝る子負ひ山車引く人や夜の風

冴え返る日本列島茶漬飯

曇天のソーラーパネル年の春

窓を打つ夜明の雨や冬の春

佐藤 久(横浜市)

陽春や馬上に弾む女騎手

白南風やまん丸つるりガスタンク

初秋の風つかみたる赤子かな

鳥渡るひとりで卵かけご飯

廃業の湯屋の貼紙クリスマス

瀬戸正洋(神奈川県)

目の裏が痒い焼酎緑茶割 

除草剤散布長靴に裂け目かな

背高泡立草臆病者は顔を洗ふ

野遊びやペプシコーラとコカコーラ

Bach「コーヒーカンタータ」桜かな

玉水敬藏(枚方市)

秋立てば穂高の風に会いに行く

秋来る穂高山岳資料館

うつうつと月の穂先の膝痛し

三日月や明日は北穂の小屋泊まり

新小豆穂高の神に供えたる

轟木加津美(市川市)

半襟を縫う指先の初日影

寒波くる待合室の指相撲

筆箱の旧姓を消す初嵐

校庭にブランコ残し卒業す

風鈴や書斎に残る万華鏡

長濱藤樹(横浜市)

カラフルな紙のごみ箱鳥曇  

美術館の長き鉄柵青葉風 

夜の秋金一円の詩集かな 

半島の日をたつぷりと大根畑 

初雀一茶の句碑へ糞ひとつ 

新倉久男(横浜市)

花の世を通勤電車黙・黙・ト

上下から羽根を打たれど時化を飛ぶ

秋高しパソコンたたくだけの部屋

喪服らの井戸端会議無月かな

救急車、加齢の耳はダンボかな

兵野むつみ(横浜市)

読初の睡魔しきりに「夢十夜」

冬帽子真深かに老は一様に

余寒なほ子規終焉の部屋に来て

散り敷きて椿五色の浄土かな

夕桜そろそろ魔物棲みさうな

比留間加代(横須賀市)

下がり目の虚子の似顔絵あたたかし

海神の穏やかなる日薔薇崩る

日焼け子の皮膚ほろほろと剝れをり

全身ではにかむ晴れ着七五三

山肌の崩るるままに冬ざるる

吹野紀子(鳥取県)

蚕豆の綿やわらかし嘘ひとつ

蕎麦打の弾みし音や山笑う

空蝉や神魂神社の男坂

イザナミの化身となりし揚羽蝶

遠雷や遠くの友を思いけり
福本敬子(米子市)

打吹山の天辺にある糸桜

見下ろせば巨大古墳や梅雨晴間

手水舎の長き行列山開き

美保湾を一望にせり山躑躅

辨天の五十鈴の音色半夏生

藤田裕哉(横浜市)

ランドセルの鈴音聞こゆ桜東風

運転手の視線ぶつけ合う炎天

白壁にへのへのもへじ秋暑し

黄落やゆっくり溶ける角砂糖

饅頭に寺の刻印小鳥来る

藤盛愉皐(西宮市)

青白き尼僧のうなじ春清し

汗にじむシャツや乳房のはつらつと

家族みな大声揃い蓮の飯

毛糸編む片袖残し恋終わる

春待つや薄く紅ひく通院日

安本 純(堺市)

道頓堀の太鼓連打や初芝居

囀や木陰に空の車椅子

断捨離のふんぎりつかず登山靴

蛸壺の転がってゐる浜の秋

田終ひや淡き煙の遠近に

やなぎあやか(いすみ市)

七月のはじめポットを洗ひをり

バナナ分け話せる人のをりにけり

インディアカシャトル飛び込む夏の雲

つゆ草やこころづくしの雫あり

こんこんと水面を照らす竹の春

やまぐち若葉(堺市)

鋭角に割れ如月のチョコレート

両陛下の最後の伊勢路新樹晴

豊の秋おやじバンドの音合はせ

さよならを云つてまだゐる盆の月

夏隣少女の白き膝小僧